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ヴィクトリア朝の建築

ヴィクトリア朝(1837年~1901年)といえば、大英帝国の最盛期。
帝国の繁栄とともに帝都ロンドンが急速に発展し、郊外に住宅が立ち並び始めた時期でもあります。

夏目漱石が留学していたのもヴィクトリア朝末期~エドワード朝にかけて(1900年5月~1903年)ですが、彼が留学時代に住んだ下宿はロンドン北のハムステッド、南のカンバーウェル、クラッパムやトゥーティングなど計五箇所。どこも都心部ではなく、ロンドンの近郊・郊外にあたる土地です。

その中のひとつ、カンバーウェルからロンドン中心部に出る方法について、漱石は留学時代に書いたエッセイ『倫敦消息』の中でこんな風に記しています。

《僕の下宿は東京で云えばまず深川だね。橋向うの場末さ。下宿料が安いからかかる不景気なところにしばらく――じゃない、つまり在英中は始終蟄息しているのだ。その代り下町へは滅多に出ない。一週に一二度出るばかりだ。出るとなると厄介だ。まず「ケニントン」と云う処まで十五分ばかり徒行いて、それから地下電気でもって「テームス」川の底を通って、それから汽車を乗換えて、いわゆる「ウエスト・エンド」辺に行くのだ。》

ロンドンに地下 電気、つまり地下鉄が開通したのが1863年、ヴィクトリア時代の真っ只中。地下鉄の普及と合わせて、郊外の住宅も急増していきました。
そんなわけで、ロンドン近郊を歩くと、ヴィクトリア時代に立てられた住宅にたくさん行き当たります。

            ヴィクVictorianbuildingトリア朝に立てられた住宅の特徴は
①出窓
②スレートぶきの傾斜した屋根
③赤レンガ・またはレンガの多色使い

もともとロンドン周辺で取れるレンガは黄土色(煤や排気ガスでよごれ、たいていは黒ずんだ灰色/茶色になっています)なのですが、鉄道が発達し、遠くからレンガを運んでくることが可能になったため、赤レンガ建築や、異なる種類のレンガを組み合わせた装飾性の高い建築が多く見られるようになりました。

上に挙げたような簡単な目安はあるものの、「ヴィクトリア様式」と一口にくくれるものは実はありません。
この時代、建築界にはさまざまなムーブメントが巻き起こり、複数の様式が混在しているからです。

・ゴシック・リバイバル
・クイーン・アン様式
・イタリアン
・中世風

などさまざまな様式が生まれていますが、中でも重要なのはゴシック・リバイバル様式。12世紀から16世紀、中世ヨーロッパで興ったゴシック建築(パリのノートルダム寺院など)を再評価する動きが高まり、ウェストミンスター寺院、タワーブリッジ、セント・パンクラス駅等、現在ロンドンのランドマークとなっている壮麗な建築物が生まれました。

WestminsterTowerbridge_2   

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