ベッドフォード・パーク(Bedford Park)

Bedford2_5Bedford4_3前回から長い長い時が経ってしまいました……が、何事もなかったかのように前回からのテーマ「イギリスの建築」にからむ話題をとりあげたいと思います。

ロンドン中心部から地下鉄で15分ほど西に行ったところに、ベッドフォード・パークと呼ばれる住宅地があります。(ディストリクト線沿線、最寄り駅はターナム・グリーン)

ここは1875年に開発が開始された、世界初のガーデン・サバーブ=田園郊外、つまり郊外の戸建住宅街です。ウィキペディアによれば、田園調布の先駆的存在といわれているとか。確かに、扇形に広がったベッドフォード・パークの街並みには、放射線状に区画された田園調布に重なるものを感じます。

リチャード・ノーマン・ショーを筆頭とする当時の名建築家たちが設計にたずさわったこの街には、産業革命後、空気汚染等が進んだロンドン中心部を嫌ってホワイトカラー労働者たちが移り住みました。

何人かの芸術家たちもまた、この街の住人として名を連ねています。詩人のウィリアム・バトラー・イェーツはウッドストック通り8番地、そしてブレナム通り3番地に計19年間、家族と一緒に住んでいました。有名な叙情詩「イニスフリー の湖島」は、ブレナム通りの家で執筆されたものです。フランスの画家カミーユ・ピサロも、バース通り62番地に住んでいた息子のもとを1897年に訪れ、ベッドフォード・パークを題材とした作品を6枚描いています。

ベッドフォード・パークの特徴は、大きい煙突や、格子枠の上げ下げ窓、切妻屋根なとを特徴とするクイーン・アン様式の住宅群と、豊かな緑です。Bedford_1_4

1、2時間もあれば歩いてまわれる規模なので、気軽な散策におすすめです。

参考URL: ベッドフォードパークの他にも、ロンドンの歴史的な郊外住宅といえば北のハムステッド、西のブレンサムなどが挙げられます。以下のサイトは各住宅地の写真や地図、歴史的建造物の説明など、詳しい情報が載っています。Bedford3_3

ベッドフォード・パーク

ブレンサム・ガーデン・サバーブ

ハムステッド・ガーデン・サバーブ

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ヴィクトリア朝の建築

ヴィクトリア朝(1837年~1901年)といえば、大英帝国の最盛期。
帝国の繁栄とともに帝都ロンドンが急速に発展し、郊外に住宅が立ち並び始めた時期でもあります。

夏目漱石が留学していたのもヴィクトリア朝末期~エドワード朝にかけて(1900年5月~1903年)ですが、彼が留学時代に住んだ下宿はロンドン北のハムステッド、南のカンバーウェル、クラッパムやトゥーティングなど計五箇所。どこも都心部ではなく、ロンドンの近郊・郊外にあたる土地です。

その中のひとつ、カンバーウェルからロンドン中心部に出る方法について、漱石は留学時代に書いたエッセイ『倫敦消息』の中でこんな風に記しています。

《僕の下宿は東京で云えばまず深川だね。橋向うの場末さ。下宿料が安いからかかる不景気なところにしばらく――じゃない、つまり在英中は始終蟄息しているのだ。その代り下町へは滅多に出ない。一週に一二度出るばかりだ。出るとなると厄介だ。まず「ケニントン」と云う処まで十五分ばかり徒行いて、それから地下電気でもって「テームス」川の底を通って、それから汽車を乗換えて、いわゆる「ウエスト・エンド」辺に行くのだ。》

ロンドンに地下 電気、つまり地下鉄が開通したのが1863年、ヴィクトリア時代の真っ只中。地下鉄の普及と合わせて、郊外の住宅も急増していきました。
そんなわけで、ロンドン近郊を歩くと、ヴィクトリア時代に立てられた住宅にたくさん行き当たります。

            ヴィクVictorianbuildingトリア朝に立てられた住宅の特徴は
①出窓
②スレートぶきの傾斜した屋根
③赤レンガ・またはレンガの多色使い

もともとロンドン周辺で取れるレンガは黄土色(煤や排気ガスでよごれ、たいていは黒ずんだ灰色/茶色になっています)なのですが、鉄道が発達し、遠くからレンガを運んでくることが可能になったため、赤レンガ建築や、異なる種類のレンガを組み合わせた装飾性の高い建築が多く見られるようになりました。

上に挙げたような簡単な目安はあるものの、「ヴィクトリア様式」と一口にくくれるものは実はありません。
この時代、建築界にはさまざまなムーブメントが巻き起こり、複数の様式が混在しているからです。

・ゴシック・リバイバル
・クイーン・アン様式
・イタリアン
・中世風

などさまざまな様式が生まれていますが、中でも重要なのはゴシック・リバイバル様式。12世紀から16世紀、中世ヨーロッパで興ったゴシック建築(パリのノートルダム寺院など)を再評価する動きが高まり、ウェストミンスター寺院、タワーブリッジ、セント・パンクラス駅等、現在ロンドンのランドマークとなっている壮麗な建築物が生まれました。

WestminsterTowerbridge_2   

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ジョージアン様式

ロンドンで不動産広告など見ると、よく目にするのが「エレガントなヴィクトリアン建築」とか「すばらしいジョージアン・タウンハウス」などという言葉。「美しい新築マンション」という売り文句はめったに見ないので、英国ではいわゆる年代物の住宅に価値が置かれていることが分かります。

でも、ジョージアン(ジョージ王朝・1714年-1837年)様式とかヴィクトリアン(ヴィクトリア王朝)様式(その他エドワーディアン、クイーン・アン様式等)って、実際どんな特徴をもった建物なのか。なんとなく雰囲気で判断しているけれど、はっきりした定義が分からない。

というわけで、ジョージアン様式の簡単な特徴の確認です。

ジョージ王朝(1714年-1837年)

簡単な特徴は①装飾を排したシンプルな外観。②左右対称を重視③窓枠、屋根等、平らな直線使いが多いこと。

ロンドンの典型的ジョージアン様式のテラス・ハウスはこんな感じです。

Georgianbuilding

周りとの調和を重視するので、隣の建物とまったく同じつくりで、まるでつながっているみたいに見えます。この、「調和第一。自分のところだけ目立とうと思わない精神」が、「個性第一。自分のところだけ目立ちたい精神」に変わったとき、次なる様式、ヴィクトリアンの時代がやってくることになるらしいのですが……。

ちなみに1階部分の外壁が白いのは、レンガ造りの家を「格上げ」するために、スタッコを塗って、その部分だけ石造りに見せかけているというわけ。

ロンドン中心部の高級なジョージアン建築は、1階だけでなくファサードすべてがスタッコで真っ白に塗られています。

脱線になりますが――ジョージ王朝時代と言えば、ポピュラーなのはジェーン・オースティンの『高慢と偏見』。何度も映像化されてますので、当時の建築・インテリアなど参考にするのに便利です。おすすめはBBC製作のTVドラマバージョン(1995年)。長いですが、その分はしょらず、原作に忠実に描かれてます。ダーシー役のコリン・ファースは、このドラマでイギリス中の女性を「キュン死に」させてくれました。ヘレン・フィールディングもこのドラマの大ファンで、コリン・ファースを頭に浮かべながら現代版『高慢と偏見』として書いたのが『ブリジット・ジョーンズの日記』。著書が映画化されたときは、コリンにばっちり出演してもらえて嬉しかったでしょうね~。)

脱線ついでにもうひとつ。ロンドンのダウニング街10番地といえば、日本でいう首相官邸ですが、黒いレンガのシンプルで地味~なファサードの建物、これもジョージアン様式です。ダウニング街10番地の内部はウェブ上で公開されているので、建築様式とは関連ありませんが、ご興味ある人はどうぞ(→こちらです) 日本の首相官邸とくらべたら、とってもこぢんまりしてる気がします。

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新テーマで再開します

日記ブログをお休みしてしばらく(かなりしばらく!)が経ちました。自分の日常は特筆に価することがあまりに少ないので、何か別のことを書けないかな……版権ぎれの作家の日記やエッセイなど、少しずつ翻訳してみようか……などと考えていたのですが、ちゃんとした計画を立てようと思うといつまでも重い腰が動かないままなので、見切り発車ではありますが大雑把なテーマとして「ロンドン・イギリスに関するあれこれ」を書いていきたいと思います。

自分が知りたかった情報をちょっと調べるだけのメモみたいなものになると思いますが、たくさん記事が集まったらそれなりに英国/ロンドン案内ができていた――という風になればいいのですが……。

ではでは、どうぞよろしくお願いします。

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